MITSUYA NOTE

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ANCA関連血管炎と脳卒中リスクについて

お久しぶりです。みつやです。

 

現在専攻医2年目です。昨年は大学病院で勤務しておりましたが、今年度より中小規模の田舎市中病院へ転勤となりました。

一般内科は楽しいです。



さて、つい先日脳梗塞を発症された患者が原因不明のCRP高値があり、神経内科より相談がありました。

諸々精査し顕微鏡的多発血管炎 probableに該当したため説明する中で

「今回の病気と脳梗塞は関連がありますが?」

と質問がありました。

 

諸々文献を探していたところ、1つ参考になりそうなものが最近発表されておりました。

血小板数やCRPが発症リスクにかかわっているとは…

 

以下内容を引用しております。

"High risk of stroke in ANCA-associated vasculitis-a population-based study.Tabakovic D, Smith R, Jayne D, Mohammad AJ. Rheumatology (Oxford). 2023 Aug 1;62(8):2806-2812.

【Background】

  • ANCA関連血管炎患者は細小血管炎を起こし、治療としてシクロフォスファミド(ICVY)やプレドニゾロン(PSL)を用い治療を行う
  • 静脈血栓症重症感染症のリスクが高いのはもちろん、一般集団と比較し冠動脈疾患(ACSアテローム動脈硬化のリスクも高いといわれている

【P I (E) C O】

  • P:1996年から2016年まで調査地域内にいた人
  • I/E:ANCA関連血管炎と診断された人
  • C:一般集団
  • O:Primary outcome:脳梗塞のリスクが上昇するか
  • O:Secondary outcome:年齢、性別、ANCA値、血清Cre値、血小板数、BVASで変動があるか

【Method】

  • 研究デザイン:後ろ向き症例対照研究
  • 対象基準:AAV診断3か月前から死亡するまでに起こした脳卒中
  • 除外基準:一過性脳虚血発作(TIA)とくも膜下出血は除外

【Result】

(1) 脳卒中の有無による患者の属性の違い

  • 患者集団はGPA>MPA>>EGPA、脳卒中は1例を除きすべて脳梗塞
  • 診断時の年齢、性別、臓器病変、検査値は同等
  • 血小板数、CRP脳卒中を発症した集団の方が高いが有意差はなし
  • 追跡期間は脳卒中発症患者の方が中央値が長い

(2) 脳卒中の発症率

  • AAV患者における発症率は全追跡期間で11.3/1000人
  • AAV診断後3か月間の発症率は78.5/1000人、4カ月以降の脳梗塞発症率はほぼ一定であった
  • 男性は12.4/1000人、女性は10.3/1000人、50歳未満5.2/1000人、50~79歳11.3/1000人、80歳以上27.6/1000人


(3) 標準化罹患比

  • Total:1.85、男性:1.84、女性:1.86
  • AAV診断時の年齢が65歳未満の場合 SIR 3.19

(4) AAV患者の脳卒中の予測因子

  • 単変量解析では年齢が10歳上がる毎(HR 1.36)血清Cre値が100μmol/L(1.13mg/dL)上がる毎脳卒中リスクが上昇(HR 1.14)
  • 多変量解析では血小板が5000/μl増加するごとに脳卒中リスクが14%増加

(5)AAV患者で脳卒中を発症した場合の転機

  • 脳卒中の有無でVDIは差はなかった
  • AAV診断後の脳卒中の有無は死亡率の増加と関連した

【Discussion】

  • 一般集団の同地域の脳梗塞発症率は1.65/1000人であり、かなり高かった
  • 血小板数の増多は血栓形成に関与している可能性がある
  • 抗凝固薬や抗血小板薬の併用も検討する必要があるかもしれない
  • limitationは喫煙や高血圧などを考慮していない事、コホート内の脳卒中イベントが少なかったこと

 

少なくとも発症後3カ月以内となると、入院し免疫抑制薬を使用していることが多いのではないでしょうか。

入院中も丁寧に身体所見をとりながら、これらを発症しても早期に発見し早期に治療に結び付けられるようにしたいですね。